『治療のための精神分析ノート』
神田橋條治/著
<四六判 上製 192頁>
創元社 2016年5月刊行 ISBN978-4-422-11616-7
「いのちの核はコトバでないものに支えられながら、ヒトの生はコトバによって支配されている」。著者は臨床の現場で、長くこの矛盾を乗り越えることをみずからのテーマとしてきた。コトバを治療の道具とする精神分析の治療の場で、文字言語を絶対的なものとせず、治療者と患者との間の時々刻々の関係性の変化に目をこらすことで、著者は治療の場に立ち上がってくるいのちの営みを掬い上げる。そうすることで、精神分析用語として知られるコトバの真に意味するところ、治療の本質を説いてゆく。精神分析の世界への導きに始まり、先達の教え(=理論)の咀嚼、さらには独自の技法と修練の方法を紹介するなど、半世紀以上にわたる臨床の集大成ともいえる著者、畢生の書。
<目次>
まえがき
I 精神分析の周辺
アナログとデジタル
出会い
自然は折り合う
文化汚染
いのち
病
自然治癒力
学習から文字文化へ
文字文化の特質
文字文化の挑戦
フラクタル
認識から学習へ
再学習と脱学習
二種の環界
臨界期
いのちへの援助VS人への援助
病因・症状・治療
II 精神分析の入り口
治療や援助
精神分析治療の骨格
無意識と意識と前意識
食と性
絆
退行
三昧
自由連想
愛着障害
認識とコトバ
因果図
葛藤図
「と」
III 精神分析治療の世界
自由と不自由の往復
体験と観察
退行と自然治癒
現実と空想
週七回分析と月一回分析
分析治療の適応と不適応
IV 理論
理論と物語
道具としての理論
再び葛藤図について
前意識
抵抗
防衛
抑圧と解離
投影
攻撃性
転移
逆転移
行動化
治療機序
過去
未来
再び退行について
洞察と統合
徹底操作
終結と中断
V 技法
技法総論
再び治療機序について
聴き方
コトバ
再び逆転移について
治療プロセスの素描[その1]─治療の開始期
抱え
前後での会話
質問
沈黙
起き上がる・確認
身動き
キャンセル
治療プロセスの素描[その2]─「抵抗」と「介入」
介入
再び抵抗について
再び転移について
再び質問について
治療プロセスの素描[その3]─自由連想の充実と「解釈」と「洞察」
解釈
いま・ここでないもの
夢
再び沈黙について
自己開示
フラクタル
VI 修練
初心と初志
コトバの修練と感性の修練
精神分析の外(振る舞い)
精神分析の外(内省)
先達への傾倒
研究会や学会
訓練分析
スーパーヴィジョン
ケース
付録 胎児期愛着障害の気功治療
説明/診断/治療/変法
あとがき